人間は醜い。
その傍らを狭間見た気がした。
たかが中学生の子達がこんなにもどす黒く渦巻いた感情を潜めていた事に恐怖と似たような感情が溢れ出す。
同時に私の感情にもどす黒いものが沸き上がる。これは怨み。きっと私は憎いんだと思う。早苗を傷つけ人の事が。
「髪を切られたあと先生は田中と2人きりだったんだ」
「………っ」
声を圧し殺して涙する私に先生が優しい語りかけてくる。
何でその優しさを早苗に上げなかったの!?先生なら早苗を助けられたんじゃないの!?
先生に八つ当たりしているのは承知。でも当たらずにはいられなかった。止めどなく流れる涙を拭う術を私は知らない。
「そしたら田中が言ったんだよ」
―――――………これで、許してくれるかな。
「え、」
「田中は抵抗しなかったんだよ、全部。嫌とも言わずただ全てを受け入れたんだ。それに他の生徒がつけあがったんだろうな……」
「ゆ、るす?」
許してくれるかなって………
早苗が言ったの?
溢れて止まらなかった涙はピタリと止まり手から滑り落ちたコップがゴトッと大きく音を鳴らした。横になったマグカップからお茶が溢れている。
そんな些細な事を私も先生も今は気にしていない。マグカップを気にも止めずに先生は言う。
「田中が言ってたよ」
《ごめんなさい》って
「さ、なえ………ッ」
守ってあげられなくて
ごめんねっ……

