私が――――牙龍の幹部が―――――そして野々宮響子さんが2年になった初春頃、事件は起きた。
突然に。何の前触れもなく。
事は起きた。
ある日の神楽坂高校で――‥
【野々宮響子は牙龍の裏切り者だ。】
という噂が広まった。
初めはただのデマだろうと誰しもが耳を貸すことは無かった。
しかし
彼女が牙龍から孤立している姿
牙龍の面子から憎悪の眼差しで見られている光景
誰もが目を凝らした。
噂は本当だったんだと。
しかし神楽坂高校の殆どの生徒はその噂を信じなかった。信じなかった殆どは、意外にも半数が女子生徒だった。
常日頃の彼女の人柄の良さと愛嬌で女子生徒からの株が高かった。皮肉にもそれを此の一件で再確認させられた。
しかし牙龍を尊敬し敬い憧れの念を抱いている男子は言うまでもなく彼女を目の敵にした。

