やっぱりあの男は苦手だ。人に対する執着が強い、常識はずれだ。ネジが外れていて、考えがわからないから精神を使う。



意味が分からなかった話。同時に【冬】と関わった事を後悔した。あり得ない。心底巻き込まないで欲しいと思った。しかも俺に頼むところが歪んでいる。自分は高みの見物と言うところが尚更。



狂気が純粋なものだから、その純粋さが凶器になる。



全人類を愛す。でも求めはしない。特定には興味はないからだ。親も兄弟も祖父母も親友も心友も恋人も必要ない。



繋ぎ止めるものは必要ない。足手纏いは切り捨てる。例えば"血筋"。家族なんて形は邪魔。そう云う男だ。






苦手だ。
本当に苦手だ。


あの男の狂気に捕まった俺は逃げられないだろう。でもあの男だけが狂っているとは限らない、今眼の前で俺に怯える男は俺を恐怖の眼差しで見ている。


それに対し無機的な瞳で口を歪ます俺も――――――――――――狂っているのか?







きっと、あの男と出逢ってから浸食されて―――――いや、違う。もっと前。もっともっと前だ。


きっと響子先輩に会ったときから。きっと目に見えない狂気染みた愛が俺に纏わりついている。






―――――そんなの関係ないけど。どうであれ響子先輩に対する気持ちは変わらない。







今はただ。






「 死 ね 」




この鬱憤を晴らすだけ。