「戒吏は朝からずっと此処にいたのかよ」
「…まあな」
聞いた遼太に戒吏は言葉を濁しながら言う。どうかしたのか?視線が何処かに移り、戒吏は何かを思い出しているようだ。
「アイツに――――‥‥」
「え?」
アイツが響子と分かった瞬間、さっきの失言について何か言われるのかと思って焦ったが。
俺は戒吏の言葉に目を見開いた。
「アイツに会った」
それは俺だけじゃなく、他の奴も同じ。
再びピシッと空気に亀裂が入る。
「……なに話したんだよ?」
いち早くも我に返り、自分を持ち直した蒼衣が聞く。
「さあな」
「さあなってオイ…」
曖昧な答えに呆れる遼太。戒吏はそのままベンチに横になる。この空気のまま寝るのかよ。これは、もう何も言わないという合図。
それがわかっているのか、蒼衣も遼太も何も言わない。
寿々だけは響子の名を耳にいれ相も変わらず眼鏡越しの瞳が輝いていた。マジでお気楽なヤツだな。

