「カン太は神楽坂にいるよ」
―――――カン太の話をしたいと思っていた、昨日からずっと。
話を聞いて、もう少し自分の気持ちに素直になってもいいと感じた。人の事を兎や角言えないけど。
カン太は私に気を使いすぎだと思った。でも、だからこそ力になりたいと思ったのかもしれない。
いきなりの事で戒吏は俯いていた顔をあげ数回瞬きした。
不覚ながら、その動作にも見惚れてしまう。何をしても様になる。完成されたような美しさ。
「ああ。知ってる」
「…会わないの?」
「アイツ次第だ」
カン太次第って、
そんなの絶対に、
「アイツが俺に会おうと思わねえんだから、仕方ねえだろ」
違う。
違うよ、戒吏。
カン太は戒吏に皆に会うために神楽坂に入ったんだから。今のカン太は絶対自ら戒吏に会おうとはしない。誰かが背中を押さなきゃ無理なんだよ。

