「俺は…」
「……?」
「……俺は何かを間違っているのか?」
やっと目が私に向けられた。戒吏の揺らめく瞳とガチリと合わさる。珍しく弱気な戒吏が私の瞳に映り込んだ。戒吏の瞳には私はどう映ってるんだろう?
……多分。私も揺らいでる。戒吏の弱さが見栄隠れしているのに驚いて。
「アイツが言ってたんだ、お前には何かしら理由があたんだって」
目線を下に落とし、独り言のように語る。
私は"アイツ"が誰だかわからず首を捻る。
「……少し冷静になればわかることだったかもしれねえ」
……ねえ、もしかしてアイツって橘さんの事なの?
「お前が裏切るなんてあり得ないって」
なんで
……何でなの。
「…それをアイツに気づかされた」
……私には耳を貸さなかったのに、
橘さんなら意見を聞き入れるの?
……それってあの子に言われなかったら考えもしなかったって事じゃないの?
「俺はお前の口から聞き――――――」
「ふざけないでよ」
もう、抑えきれない
「私が無実ってこと?―――――もう。そんなのどうでもいいよ」
こんなこと言いたい訳じゃない
皆を責めたい訳じゃない
誰かを貶したい訳じゃない
「もう、牙龍なんてどうでもいいの」
無実か有罪かなんてどうでもいいの。
〈どうでもいい〉
考えたくない。傷つきたくないから関わりたくないだけなんだよ。
今さら、
ほんと今更だよ。
「……お前は何なんだよ」
悩ましげに呟く戒吏に私は笑う。ただ声も出さずに笑みを浮かべる。
"なに"?
「裏切り者だよ」
ただの裏切り者だよ
―――そう、皆が言ったんだよ?

