きゅっ、と全身を包まれる感触。

冷たい・・・。

でも、とても優しい何かに抱きしめられてるような。


あぁ、これは雪だ。

降り積もった白く輝く雪。


誰にも踏み込まれていない、まっさらな雪原。


その雪原にすっぽりと包み込まれてる。

冷たくて、柔らかい。

真っ白で、穢れの無い。


とてもとても綺麗なものに、あたしは抱きしめられている。



ぽたり、と。

顔の上に、雫が落ちた。

雨?


・・・ううん、これはきっと雪。

雪は、天が落とす悲しみに凍った涙だ。



天が・・・泣いている。

どうか泣かないで・・・。




あたしは閉じていた瞳を開く。

あたしの目には、一面の空。


夏の黄昏。

美しい黄金色に染まる、広い広い空。


平筆でひと塗りしたような、うっすらとした細い雲。

あぁ・・・もう・・・



「もう、夏が終わる」



知らない誰かの、かすかな声。



あたしの意識は、ことん、と途切れた。