したんだけど・・・。

しま子とは、ほとんど言葉が通じない。

だから門川君が思考を読み取って事態を把握しようとした。

でもしま子は完全にパニック状態。

思考もへったくれもあったもんじゃなかったらしい。


「そこで、こやつを探し出した」


門川君の着物の胸元からゴソゴソと小さな生き物が顔を出す。

あれは・・・。


「お前の指をかじった、穴爪ネズミじゃ」



やっぱり。

奥方の棟からの帰り道、庭であたしの指をかじった、あのリスとモグラの合いの子。


「こやつの中にある、お前の血を利用した」



血は歴史と記憶。

あたしの血から、あたしの記憶を読み取ったらしい。


「ほんの数分の記憶しか読めぬが、充分じゃったわ」