「遅かったな」

「・・・・・」

「おばあ様には会えたのか?」

「・・・・・」

「どうかしたか?」



『どうかしたか』

何て答えればいい? その問いかけに。

なにを言えるんだろう?



「・・・会えなかった・・・」

それだけを言った。

そう答えるだけで精一杯だった。



また迷子にでもなったのか?

そんな言葉を笑って返してくる彼が・・・


心底、うらやましかった。


彼は何も知らない。

知らないで良い事を知らないでいる。

あたしも、ついさっきまでは同じだったのに。



そうだ・・・。同じだったんだ。

彼だけは、あたしと同じで何も知らなかった。

彼だけは他の皆とは違う。


・・・話してみようか。

そしたら、この苦しみが少しでも軽くなるかもしれない。