静かにふすまが開いて、門川君が顔を覗かせた。


薄い緑の着流し。

生成り色の帯。

相変わらず見事に着こなして、腹立つくらいカッコイイ。


彼を見るたびに、あたしの胸はドキドキする。

最初のうちはそんな心臓を叱責して抵抗もしてたけど。



最近ではもう諦めて受け入れている。

このドキドキを。

だって、どうしても押さえられないんだもん。


いーよ、認めるよ。

確かに彼はカッコイイです。はい。



そんなあたしの気持ちに気付きもせず、彼は足さばきも見事に部屋に入ってくる。



「まだ許可してないのに勝手に入んないでよ」

わざとぶっきらぼうに言って顔を背けた。


「君に貸してはいるが、ここは元々僕の部屋だ」

「えっらそぉ~にぃ~~」

「おにぎりを持って来たんだが、必要ないのか?」

「いるっ!!!」


思い切り元気に跳ね起きて両手を彼に伸ばした。

ちょーだいっ! おにぎりー!