「水の気配と香りがする」

顔を上げて、彼はまた微笑んだ。

「よく頑張った」



あぁ・・・笑顔だ。

門川君が笑った。笑ってくれた。


嬉しい。すごく。



なんて綺麗な笑顔だろう。

子どもの頃からひどい仕打ちばかり受けてきたのに。


清らかさも気高さも、少しも汚されていない。

本当に綺麗な笑顔。


あたしも自然に笑顔になる。

彼の手の冷たさを感じながら。



この笑顔の力になりたい。

この笑顔を守りたい。

こんな気持ちは生まれて初めてなの。



自分の中に流れる天内の血に感謝したのも、初めて。


この力のおかげで、彼と出会えた。

彼を守れる。

彼のそばにいられる。


門川君、あたし・・・

そばにいるよ。


照れくさいから、口には出さない。

でも心の中で、強く、強く・・・。