神様修行はじめます!

あたしは両手に水をすくって、絹糸の後に続く。

しま子が、あたしの両手を包むようにカバーしてくれる。



どうか届きますように。


できるだけ、こぼれることのないように。

できるだけ、たくさん運べますように。


できるだけ、伝える事ができますように。


ひとりぼっちで待っているあの人に・・・。



「急げ急げ! 門川君が待ってる!」



でも急いで道場に飛び込んだ時には、当然ながら水は一滴も残ってなかった。


「あ~あぁ・・・」

がっかり・・・。


「だから言ったであろうが」

「? なんの話をしているんだ?」


絹糸から話を聞いて門川君は・・・

あたしを見て微笑んだ。


「手を出して」


言われてあたしは両手を差し出す。

門川君は優しくあたしの手をとって、そっと自分の口元に近づける。


ドキン・・・


メガネの奥の閉じられた目。

少し陰を作るまつ毛。

形の良い唇。


手の平に、その唇でキスされるのかと思った・・・。