「じゃあ、そーゆーことなんで。すみません」

あたしも門川君の手首をつかみ返す。

そして反対の手で、しま子の手をつかんだ。

「これで失礼しますっ!」


ぺこっと頭を下げて、あたしはそのままズンズン進み出した。

「さ、絹糸も行くよっ」



ずんずんずんっ・・・。

さりげなーくペースアップしながら、前進する。

なんか文句言われる前に、とっとと立ち去ったほうが賢明!


逃げるが勝ち!

逃げるよ―――っ!!



「天内君・・・」

「黙って歩いて、門川君」

「天内君」

「さっさと歩いてったらっ」

「そっちじゃない。方向が逆なんだが」

「早く言ってよ! そーゆー事は!」


あたしは赤い顔してそう叫んで、くるっと方向転換した。

門川君としま子の手をつかみ直して、小走りで進みだす。


行け行け―――っ!!


グイグイとふたりの手を引っ張って引っ張って、ずんずん進む。


ぼうっと立っているお母さんと狐面の前を、勢いでバタバターッと通り過ぎた。


視線を感じるけど、気にしないっ。

なんか狐面がしゃべった気がするけど、聞こえないっ。


気付かないふりっ、知らないふり~っ!


いっそげえぇ~~~っ!!



門川君としま子を、ほとんど引きずるように引っ張りながら、あたしはその場からの逃走になんとか成功した。