彼は確かにここにいた。 同じ星空を眺め…… 一緒にコーヒーを飲んで…… 二人で過ごした夜があった。 私はベランダに出ると…… あかりの灯っていない隣りのベランダを…見つめた。 初めて話したあの夜…… 確かに彼はここにいたのに…… それはまるで夢の出来事であるかのように、 色褪せて…… 掠れていく。 あのひとときは… 現実だったのだろうか。 そう、疑いたくなるほど……… 遠い遠い、雲のような存在であったと……。 ぼんやりと思った。