仕事から帰り、汗だくになっていた私は…、
ひとまずシャワーを浴びようと浴室へと向かった。
脱衣所で服を脱ぎ、ポケットの中身を確認する。
仕事中は…
とにかくここに何でも突っ込む癖があるからだ。
この習慣を忘れると、洗濯物がティッシュまみれになる大惨事も起こりうる。
怠ってらならない作業である。
…と、
「……あ…。」
奥底から出てきたのは、今朝拾ったネックレス。
チェーンの切れた所から、するりと指輪が転げ落ちた。
「…やば…。」
運悪く…
それは洗濯機の下へと潜りこんだ。
結果…
重たい洗濯機と格闘して何とか取り出すと……
私は、柔らかいタオルで、優しく埃を拭き取った。
「…早いとこ持ち主に返さないと。」
焦る気持ちを抑えて、とりあえずシャワーを浴びた。
すぐさまあがると、まずはタオルドライをして…、
着替えて…、
それから、ネックレス片手に…玄関を出た。
同じ4階に住む人の部屋を、一軒一軒回る。
ここの住人は、専業主婦が多い。
なぜなら医者や弁護士、公務員など…
旦那さんが、ある程度高収入を得る職業に就いている人が多いからだ。
だから…、大抵はこの時間、インターホン越しからは奥さんらしき人の声。
けれども……
持ち主は見つからなかった。
真新しい宝石であるならまだしも、古びたシンプルな指輪。
嘘ついて自分のものにしようなんて人は…
いないハズだ。


