朝のワイドショー。
出勤ギリギリ前に見た星占いでは12位。
「…『忘れ物に要注意』……。って、アホか!」
『信じる者は救われる』…。
いいことしか信じない私にはアダとなる?
とにもかくにも、これじゃあ一日の出鼻をくじかれてしまう。
私は身体を翻すと……
再びマンションの中へと戻った。
広いエントランスの道ゆく先に…
人影があった。
その人物の顔が見てとれるくらいの距離で…
「おはようございます!」
私は挨拶する。
父の教え。
『人間関係の始まりはまず挨拶から』。
しかし…
その相手は、聞こえないのか返事を返さない。
通り過ぎ様に、チラッとその人の顔を見る。
若い、男の人……。
私とそう変わらないくらい……?
このマンションに、そんな人いたんだ。
今時の若者は挨拶もロクにできないのか。
そんなことを考えながらも……
大して気にも留めず、
再びエレベーターの前に立った。
外は秋晴れ…
澄んだ空気に、ほどよい太陽の温もり。
私はその中を……
風を切って走り抜けた。
いつもよりも速く、
より速く……。
「…12位なんて言わせな~い!」
ペダルを漕ぐその足に、妙に力がこもった。
辿り着いた職場で、真っ先に時計を確認する。
いつもより…
数分……早い!
「…ざまあみろ!」
失笑ぎみにぽつりと漏らす。
「…わこちゃん、その時計5分早いからね。」
丁度に側にいた同期の美帆がくすりと笑う。
社員証にライトが反射して、私の目にささった。
「………。」
鞄から取り出した携帯の時計は…
8時31分。
ギリギリ…
アウト!!
この後、平謝りの連続だったことは…
言うまでもなかった。


