綺樹はしばらく黙っていた。 「ただ、おまえは嫌われていない。 私は、スペインの家には、姿さえ見たくないほど嫌われている」 綺樹は顔を上げると、涼の横顔を見上げた。 ちょっと縋るような表情に、似ていた。 「好かれている人を増やしたら? 家族を。 愛している人を、家族にしたら?」 綺樹は立てていた膝に、肘をついて頬杖をついた。 表情が隠れて、わからなくなる。 涼は隠している手を取りのぞきたかった。