車に乗ってからも、和也は無言だった。走り出してからしばらくして、


「和也、怒ってるの?」


 と私は恐る恐る聞いてみたけど、和也からの返事はない。


「あ、あれは……ただふざけただけなんだから、気にしないで?」


 和也に向かい、そう言ってニコッと笑ってみたけど、和也は怒ったような顔で、前を向いたままだった。


「あそこの雰囲気に呑まれたっていうか、お互い付き合ってる人が今はいないから、欲求不満というか……。だからさ、」


「やめてくれ!」


「え?」


「その話はしたくないし、悪いけど少し黙っててくれないかな?」


「ごめん。わかった……」


 怒られちゃった……

 私はしゅんとなって俯いた。あのキスを和也がどう考えてるかは解らないけど、少なくても私のように、喜んでいない事は確かだと思う。