小柳君は私の顎に指を掛けて顔を上げさせると、ゆっくりと顔を近付けてきた。キスされるのだろう。


 でも、二人の唇が触れる寸前、私は顔を背けてしまった。

 今、この男とキスをすると、土曜日にした和也とのキスの記憶が、消されてしまいそうだから。

 まだ私の唇にはっきり残っている和也の記憶を、他の男なんかで消したくなかったから。


 小柳君は、そんな私の態度に腹を立てたらしく、私をベッドに押し倒し、馬乗りになった。

 無言で私を見下ろす彼を見ると、眉間にシワを寄せ、険しい顔をしていた。


 小柳君は、ネクタイを乱暴に引き抜き、白いワイシャツのボタンを2〜3個外し、再び顔を近付けて来た。

 今度も顔を逸らしてキスを避けると、小柳君は私の首筋に唇を付け、同時にブラウスのボタンに指を掛けた。


 されるがままの私は、あっというまに下着だけのあられもない姿にさせられた。


 ああ、また私は汚れるんだわ……

 情けなくて、涙が出てきてしまった。目をつぶると、瞼に和也のムッとした顔が浮かんだ。

 和也、ごめんね……


 涙が次々と目から溢れ出し、こめかみを流れていった。