その様子を呆れまじりに見つめる女性がいた。 紫音と同じ質の長い黒髪。それを後ろで高い位置にまとめ上げられている。 「まったく、困った子ね」 その言葉には呆れと共に優しい愛情に似た感情も交じっていた。 彼女こそが藤岡家の当主にして紫音の母親、藤岡藍羅《ふじおかあいら》だ。 彼女は駆けて行く娘―――紫音を見えなくなるまで眺め、見えなくなるときに藍羅は背を向け、家へと入っていった。