僕が左を向けば、廊下とその奥の父さんの部屋の様子が丸見えなんだけれども。


 ……何故だろうね。


 誰もいないその父さんの部屋から、誰かの視線を感じるんだ。


 誰かの気配を感じるんだ。


 僕はすぐに左を向いて、その視線の、その気配の正体を確かめようとした。


 ……けれども、そこには今いる部屋から僅かに見えるベッドしかなく、誰もいない。


 まあ、当然だよね。


 僕の父さん、その時間は仕事をしに出掛けているのだから。