ガチャガチャ…カチッ…

ニーナが機械類をいじる音がバルーム内に響いた。

リュート達は騒ぐと怒るので、じっとしている。

「リルトが出来たのに、私が出来ないはずは…」

ガチャ…ガッチャン!

永遠とも思われた時間が過ぎた所で、やっと正解したらしく、バルームがすぅと動き始めた。

「お!やった、やったぜ、ニーナ!」

「ふぅ…動けばこっちのもんよ…
さ!飛ばすわよっ!」

ニーナがハンドルを握り、ぐっと力を入れて倒す。
が、バルームの速度は変わらず、今やっと、城を包んでいた泡を抜けようとしている。

「…飛ばせねぇみたいだな…」

ニーナがギロリとガルを睨み付けた。
咄嗟に外に視線をずらす。
最悪の事態が起ころうとしているのに、海の中はまた美しく、穏やかだ。

そんな景色とは全くもって似合わない音が鳴り響く。

「あ゛〜っ!もういやぁっ!」

ニーナがついにキレた…
ヒステリックに叫び、頭を掻きむしっている。

何を触っても、まったくバルームのスピードは変わらない。
そのゆるゆるのスピードが余計にイライラを募らせたのだ。

「…ニーナ。」

「なによっ!」

リュートはいつもの決まり事をやぶって、思いきって声をかけてみた。
予想通り、物凄い剣幕で睨まれる。

その迫力にリュートは一瞬ひるむが、恐る恐る、指を突き出した。

「これ、押してないんじゃないか?」

リュートの指の先にあるのは緑のボタン。

「ほんとだ…なんだろ、これ?
リルトのには無かったような…」

躊躇することなく、アサリの貝ぐらいの大きさのボタンを押す。

沈黙…

「なんにも起こらねぇな…」

ガルが言い終わるのが早いかの一瞬で、バルームは今までのが止まっていたかのような速度で走り出した。

「きゃあああっ!」

「なんだ、なんだ、なんだ?」

そのスピードに振り落とされないように、必死ですがり付いた。