シーファは自分のベッドでパチリと目を開けた。
どうやらいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
ふるふると頭を振って、あくびをすると、次第にはっきりしてきた頭で布団もかぶらず寝ていたのに気付く。
もう一度眠ろうと、目を閉じようとした時、どこからか自分を呼ぶ声がした。

「何?ニーナ…」

そう言って、シーファはデジャヴに襲われた。
あの時、船の上で、名前は呼ばれなかったけど、確かに誰かが話している声が聞こえた。

(あの時と…同じ…?
あの時は、満月がどうって…)

ニーナはやっぱり寝息を立てている。

「……シルフェリア…」

まだ夢かもしれないという疑念は吹っ飛んだ。
ここではその名前は名乗っていない…
一体誰が…?
ベッドから降り、耳を澄ます。

「……シルフェリア……こちらへ…」

よりはっきりと聞こえる自分を呼ぶ声。
シーファはふらふらと部屋のドアを開けて、廊下の様子を見た。
廊下は静まり返り、部屋の前で誰かが呼んだということはない。

もう一度声が聞こえると、廊下へと足を踏み出した。

声のする方へ歩いていく。迷うことなく、大きな扉の部屋に突き当たった。

この部屋に入れということなのだろう、しかし、少しの間、怖くて足が動かなかった。

意を決し、震える手で扉を押し開け、中に進んでいった。
広く、何もない部屋。
ただ、奥に部屋の天井から流れる滝があるだけだ。
その滝の前に、セイドとアリアが立っていた。

「王様に王妃様…
私を呼んだのはあなた方なのですか?」

2人は優しく微笑み、うなずいた。
王妃の顔は喜びに満ち溢れていた。

「……ああ…あなたはやはり、シルフェリアなのですね…」

「シルフェリアは私が育った国で呼ばれていた名前です。
でも、みんなと海に出て、捨てたんです。」

「……トイス王国…
あの国で暮らしてきた…」

「?―――はい、何で知って…」

「家族はいたのかね?」

「はい…」

「それが本当の家族ではない事は?」

「………知っています。
どうして、そんなことを知っているんですか?」

セイドは悲しげに笑った。