「おい、こりゃあもっと北の海でしかとれない魚じゃねぇか?」

「お!にいちゃん、魚に詳しいみてぇだな!」

嬉しそうに目を輝かせて魚を眺めるガルに魚屋の親父は同じく嬉しそうに腕をまくった。

「ああ、まぁ、魚だけじゃないがな…で、この魚はどう料理したら美味いんだ?」

ガルはしばらく魚屋の親父と話した後、何匹かの魚を買って店を後にした。

「こりゃあいいもんが手に入った。まさかこんな南の国でこの魚が捕れるとはな…これも女神の加護ってやつか。」

最初のおばちゃんに魚屋の親父も言っていた、この海域は海の王様達に護られていて、不思議なことに他でしか生息出来ない種類の魚が捕れるのだそうだ。

海流のせいなのか、はたまた本当に海の王のおかげなのか、解明はされていないが、ガルにとってはどっちでもよかった。

美味い飯さえ作れれば。

ごつい体に男臭い雰囲気、しかし、そんなガルの唯一の趣味が料理だ。

この事を他人が知ると必ず意外だと言われた。もちろんさっきの魚屋の親父にも言われた。

いつもガルの繊細で美味い料理を味わっているリュートやニーナさえもいまだにこの趣味を笑ったりする。まぁもっとも本気ではないし、例え本気であってもガルは料理をやめないだろう。

露店の一件一件をじっくりと見て歩いていると、なんと珍しい香辛料を見つけたガルのテンションは一気に上がり、香辛料に手を伸ばす…

が、同時に伸びた手にその動きはピタリと止まった。

「あ…」

ガルが顔を上げると、女がこちらを同じように見上げていた。