その時、まだなにか言いたげなアレンの側で、からんという軽い音と、鈴が転がるような声が上がった。
「あ。すみません!」
テーブルに立て掛けておいたアレンの松葉杖を、ウエイトレスが足で引っかけて倒してしまったらしい。
手にしたトレイをテーブルに置くと、すぐに屈み込もうとする。
「こちら、ご注文の品です。ごめんなさい、すぐに拾いますんで」
「あ、いいですよ、わざわざそんな」
だが同時にロイも、身を屈ませてテーブルの下に手を伸ばしていた。
松葉杖を拾い上げたウエイトレスと、ロイの視線が、至近距離で交わる。
彼女は困ったように赤くなってアレンの方に目をやると、すぐに、息を呑んだ。


