「待って。相手はピストルのアーミーだろ? 視界はこっちと同じじゃん。どうやって攻撃しかけてきたの」
「バリア人だよ。コウモリのビースティーだ」
「コウモリ? って……まさか」
「超音波だってよ」
コウモリは夜行性、暗闇で生活しているが視力はほとんどなく、目の代わりに特殊な周波数の鳴き声を使う。
それによって空中を飛ぶ虫の正確な居場所を把握して、捕食するらしい。
その超音波を、コウモリの能力持ちのバリア人は、人間の姿を取っている時でも使えるというのだ。
「そんなんアリかよ……」
「ほら、ナイジェルもキュウも鼻いいじゃん。ロイの目だってスコープ(千里眼)だし」
「人よりちょっと良い程度だろ。狙撃手の訓練受けて、確かに上がったけど」
「うーん……他はよく知らないけど、アラン系は皆そんなもんなのかもな。あたしなんか人より食べるだけで、何にもないし」
自分の能力の特性が、能力を使っていない時でも多少現れるという現象は、よくあることだ。
ただしそれは大半が、人間の姿でもなんとか順応できる程度のものであることが、広く知られている。
ロイの視力が良いのも(ちょっと、と本人はいうが、狙撃銃の能力を持つ人間の視力を数値化すれば、最低でも他の人の五倍はある)、ナイジェルやキュウの嗅覚が優れているのも、そうだ。
人間の姿でも目や鼻はあるから、その特性も発現できる。
だがコウモリ男のそれは、彼らの例とはまた異質なもののように思えた。


