人質の女性は、抵抗することもやめて目を固く閉じている。
痛みに喘ぐ男はそれをいいことに、彼女の体を盾にしようと、力ずくで左右に揺さぶっていた。

だが、指先からの弾丸は、人質ではなく男の体力を、確実に削っている。
いつのまにか、最初に口を開いたひょろりと背の高い男も、指先を伸ばしていた。

肩に、頬に、腕に、脇に、脚に、腿に、弾丸が当たる。

掠めただけだろうと痛いものは痛く、血も出る。
気がつけば男は、満身創痍といっていいほどに傷付いていた。

男は焦り、苛立ち、気が狂いそうなほどの怒りに、我を忘れる。
そして、ついに、最もやってはいけないことを、やってしまったのだ。