レベッカ





扉を開ける間も惜しかった。

そして、扉を開けた瞬間に、どうしようもない絶望感を、本能的に感じた。
肌でわかったのだ。

つんと鼻を突く生臭い臭い。
奥の部屋が明るい。
空気までねっとり湿っている気がする。

ナディの悲鳴はもう、しない。

あんなに急いで走って来たのに、二人は、扉を開いたまま、しばらく動けなかった。
サイレンの音がする。
こちらに近付いて来ているのだろうか。

ロイが、足を一歩踏み出す。
アレンも続いて一歩。
下を向いたままでゆっくりと、あかりの灯った部屋へ、近付いていく。

そして、全てが見える位置で、やっと顔を上げた時、二人の目に映ったのは、どうしようもない、赤だった。