「……ロイ、行こう」


怒りを押し殺したような声で、アレンが言う。

彼女は、自分だって盗みで生きているくせに、人の命には敏感だ。
両親の死を覚えてもいないロイは、その率直さが少し、羨ましい。

だから、だろうか。
なぜか少し、言うのを躊躇った。


「アレン、」
「んだよ、早く行かないと、また誰か」
「この、血で汚れたところ」
「はぁ?」
「八番街の」


アレンは、低い声で言葉少なに言うロイに、訝しげな顔を向ける。
そしてロイが手にした地図にちらりと視線を落とすと、「それが?」と、噛み付くように言った。

だが、一瞬後、もう一度地図を見て、目を見開いた。


「え? この公園の向かいって……」


いつも集まる公園の東屋。
そこから眺めると見える、薄い黄色の建物郡。
真ん中の家から、時々扉を開けて、小さな女の子が手を振るのが見えたりして。

それは。



「この辺りに……丸、ついてる、ぽい」

「――……レベッカ……!!」



レベッカの家のある、ちょうどその辺りだった。