レベッカ





「……はぁッ……ハ、」
「……アレン、……」


路地裏に、荒い息遣いと、人を呼ぶ声がこだまする。
冷たい石のビルに挟まれた、細い狭い隙間を、アレンはロイの手を引いて必死に走っていた。


「アレ、ン」
「……っは、」
「おいアレン!」


呼んでも反応しない、足を止めもしないアレンに痺れを切らして、ロイは後ろから強く手を引いた。

やっと振り返るアレン。
その目は明らかに、久しぶりの発砲からの興奮状態にあった。


「もう大丈夫だって、あいつはここまでは追ってこれない」
「……あ……あ、うん」


は、は、と、短く息を吐いている。
次第に目の焦点が戻っていく。

ロイを視界に入れたアレンは、大きく溜め息を吐いた。

レベッカが心配していたのは怪我などではなくて、本当はこういうことなのかも知れないと考えながら、ロイは両手でアレンの手を取った。