レベッカ




その音が聞こえた瞬間に、二人は走り出した。
侵入に使った窓は、開けたままにしてある。


「アレン! 先に行け!」


ロイに促されて、アレンは一瞬の躊躇いもなく、ロープを掴んで窓枠を蹴っていた。
先に行けだのお前が先にだのという譲り合いは、この状況では時間の無駄になるだけだ。

今までにないスピードで、屋上まで登りきる。
それを確認すると、ロイも窓の外に出た。
足で蹴って、窓を閉める。
器用にロープを巻き取りながら、素早く登っていく。

屋上で待っていたアレンは、小さなナイフを取り出していた。
いつもならロープが短くなるのが勿体ないのでほどいているが、すばやくロープを切って、手摺から何者かが最上階へ降りたという証拠を隠滅するためだ。

しかし、それを丸めてポケットに突っ込んだロイの耳が、嫌な音を拾っていた。