レベッカ




ポケットに入れた盗品を、全てもとあった場所に戻す。
開けた引き出しも全て閉め直す。
ロイはコートのめくれたポケットまできちんと直して、クローゼットを閉める。

幸い、二人は曲がりなりにも、幼い頃から盗みに手を染めてきた、プロだ。
必要以上に荒らすことはしていないため、後始末はすぐに済む。

自分たちがここに入った痕跡を全て消して、素早く部屋を出た。

だが、外からまた針金を使って鍵をかける作業に、いつもより手間取ってしまっている。
ロイの動揺と焦りが伝染してきて、アレンもそわそわと、エレベーターと相棒の手元を見比べる。


「ロイ、早く」
「あとちょっと」
「!」


エレベーターに誰かが乗った。

思わず口に出してしまいそうになって、アレンは両手で口を塞ぐ。
ロイにそんなことを伝えてしまったら、ますます焦って、手元に集中できなくなる。


(二階……あと十四階……っ)


かちゃかちゃ。
アレンの目はエレベーターの階数表示を見つめ、耳は、ロイの立てるピッキングの音だけを拾う。

かちゃかちゃ。
ランプは、『4』に灯る。

かちゃかちゃ。
『5』に移る。


(来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな……っ!!)


かちゃかちゃ。
――かちゃん。