レベッカ




血の臭いのする“なにか”がこびりついた鞘。
アレンの手首並みに太いグリップ。
ノコギリのような、凶悪な刃。


「ノコギリ、の……ような……」


ぽつりと呟いたアレンに、ロイが顔を向ける。
ナイフと呼ぶのが憚られるほどのそれを鞘に仕舞いながら、少し冷静になった声で言った。


「あの、連続強盗殺人と」
「だよな!? ……同じ凶器……」


被害者の傷口に見られる凶器の特徴は、今やシガテラ中に広まっている。
それは、ロイとアレンが見つけたこのナイフの特徴と、ぴったりと当てはまるものだった。


「ここの客……さっきの男が、強盗殺人鬼なのかよ……!?」
「こんなナイフ、そう見るもんじゃないし……その可能性は高いよな」
「少なくともシガテラでは、こんなの売ってねぇよ」
「……なぁ……アレン……」


ナイフを鞄に仕舞ったロイは、アレンを見た。
アレンも、ロイの顔を見る。

数秒顔を見合わせて、二人は、無言で立ち上がった。