「ちょっ……なに、コレ」
「な……ナイフ」
「んなの……見りゃわかるよ」
現実味もないまま言葉を交わすと、ロイがおもむろに、伸ばした袖越しにその太いグリップを握った。
見ているだけでも、ずっしりと重いのがわかる。
ゆっくりと鞘から抜くと、かすかな血の臭いが鼻を擽った。
鞘のふちにわずかにこびりついた、なにか黒いもの。
「と……屠殺用……とか? ほら、鹿とか魚とか捌くのにさ。料理人なんじゃねぇの、さっきの……奴……」
アレンは、意味がないとはわかっていても、言わずにいられなかった。
ロイが、暗闇でもわかるほど真っ青な顔をして、首を横に振る。
「これ」
鞘のふちの黒いものを、震える指先で指す。
塊から一本飛び出た、毛のようなもの。
「……人間、の……髪の毛だ……!」


