「ロイ、急ごう」
返事はなかった。
「ロイ?」
アレンは、相棒を振り返った。
ロイは、クローゼットを開けて、中にかけられた洋服のポケットや、靴の中、鞄などを物色していたはずだ。
だが、何度呼び掛けても、その背中は反応を返さない。
さすがに訝しんで、アレンはクローゼットに近寄った。
「ロイ? どうしたんだよ、なに見て」
言いながらロイの手元を覗き込んだアレンは、言葉を無くした。
肩に担ぐほどの大きな旅行鞄。
ロイが大きく開いたその口からは、大きな、アレンの腕ほどもありそうな大きなナイフが、覗いていた。


