「あんま心配かけんなって何回言ったらわかるわけ」
「無茶言うなよ。こんな仕事なんだからしかたねーだろ」
「うるせーよ」


ロイの腕が、脇腹から、背中に回る。
壊れ物を扱うように引き寄せられながら、アレンは、あちこちに感じる傷の痛みとは別の痛みを、どこかで感じていた。


「俺の許可なく怪我なんかしてんじゃねーよ」


耳元で囁き声が聞こえる。
長い腕とふわふわのくせ毛は、離れがたいほど心地がよくて、思わず抱き返してしまいそうになる。
自分は無傷なくせに、アレンよりもよほど痛そうな、弱った姿。



ロイは昔から、案外心配性だ、と、鈍ってきた頭で考えた。

そういえば昔から、仲間が傷付くことを、誰よりも嫌っていた。
アレンもレベッカも、俺が見てないとこで無茶すんなよ、そんな台詞が口癖で。


そしてその心配性は、あの日から、こんなふうにロイの弱さになったのだ。