「あの時、あたしが地図にもっと早く気付いてれば、レベッカは」
「なんでそうなんの。あんたが後追うって言ったの、止めたのは俺だよ」
「でも、せめてあの時撃ててたら」
「それも仕方ないことだったろ」
そんな陳腐な言葉しか出てこないことが、もどかしい。
もっと他に言うべきことはあるのに。
もっと他に言いたいこともあるのだ。
フェンスから離れて歩き出したアレンの後ろ姿を、ロイは追う。
「……そっちこそ、俺のこと恨んでると思ってた」
「なんで」
「レベッカも、あんたも、ちゃんと守りきれなかった」
後ろめたさを吐き出すように、言う。
少しずるいとは思ったが、七年間、ずっと押し殺し続けてきたものなのだ。
清算できなくても構わない、とにかく言いたくなった。
「火事のこと、」というアレンの呟きに、頷かずに返す。
「あんなの、ひどいよな」
あの夜の、燃えるレベッカの家を見るアレンの顔は、忘れようとしても忘れられないだろう。
忘れてはいけないと、彼女の泣き顔を見るたびに思い出してきた。
「レベッカを選べなかったんだよ、俺。他にもっとやりようはあったのに」


