「じゃあ、とにかく休んでおけよ。いつまた通報が入るかわからないからな。今は人手も足りないし」
「はい!」
アレンは、立ち去るエドの背中を見送る。
角を曲がるまで後ろ姿をぼんやりと眺め続ける横顔を、ロイが見ていた。
そして、口を開く。
「飼い主に置いてかれた犬みたい」
「……は?」
「それか、自分だけおやつ当たらなかったガキとか」
「なに」
目を細めて睨み付けるアレンを、ロイは目だけで見下ろす。
「飯食いっぱぐれた猫?」
「……食い物から離れろよ」
「食堂でも行きますー?」
「さっき食ったばっかだっつーの!」
二回戦でも始めそうな雰囲気だが、キュウは、アレンをからかうロイを、にやにやと笑いながら見ていた。
ニラまでもが、口許を緩ませている。
それに気付いたロイが、眉を寄せた。
「……なに、ニラまで」
「別に?」
「ほんと素直じゃないですねぇ」
キュウの言葉に、ロイの顔色が変わる。
なにか余計なことでも言われてはまずいと思ったのか、くるりと背を向けた。
「うるさいよ、ったく」
「なんの話だよ?」
「あんたには関係ねー話」
「はぁ? ちょっと、」
足早に屋上への扉へ向かったロイのあとを、アレンが追う。
扉が閉まるその瞬間まで聞こえてきた小さな言い合いに、残された二人は、溜め息を吐いて苦笑を浮かべるのだった。


