潮で汚れた『ピースフォース』の文字が、陽の光を反射する。
海は穏やかだし、街は相変わらず平和とはほど遠い。

だが、いつも通りだ。


しかし、そんな日常を真ん中から破くように、最上階の廊下は、騒がしかった。
走り抜けるような慌ただしい足音を立て、声を張り上げながらある場所へ向かう、二人の隊員。

それもある意味では、MYの日常だった。


「だからなんでお前は避けられる攻撃を避けねぇんだよ! なに無駄に怪我してんの!?」
「そんな動きじゃ効率悪いだろ!? 別にたいした傷じゃないんだからいいじゃん!」
「よくねーよバカじゃないの!?」
「あーもーうるっせーな!!」


不意にアレンが立ち止まる。
長いポニーテールを振り乱して壁を叩くと、ばぁん、と小気味良い音が鳴った。


「あたしはスピード命なの速くなきゃ意味ないの! お前みたいに間合いもいらないしいちいちそんなことでタイムロスしてらんねぇんだよ!」


ロイは体を折り曲げて、威勢を押さえ付けるように上から睨み付ける。


「屁理屈こねてんじゃねーよ! お前が一旦引いたって他にもニラとかキュウとかいんだろ!?」
「そのニラとキュウがあたしに好きにやっていいって言ってんの!」
「だったらもう少し感謝しろやお前のワンマンプレイに付き合うのどんだけ大変だと思ってんだよ!」


子供のような口喧嘩だ。

その様子を、相変わらずか、というように眺めているのは、これまた相変わらずな、ニラとキュウである。
名前を引き合いに出されたことは気にせず、呆れ顔を浮かべている。