レベッカ




その行動はアレンにも、もちろんナイジェルにも、意味がわからなかった。

しかし一呼吸遅れて、その方向から聞こえた悲鳴に、二人は素早く振り向く。
ライフルによって大きく抉れた建物、その物陰からは、よろよろと覚束ない足取りで、マルクが出てきた。


「お前っ……」
「ライフルの視力舐めんなよ、あんたら」


地面に倒れ込んでロイを睨み付けるマルクの、太股のあたりが赤く染まっていた。
命に別状はなさそうだが、動けはしないだろう。

激しい痛みがマルクを襲うが、失神してしまえるほどの傷の深さではないらしい。

思いきり顔を歪めるマルクに、ロイは続けた。


「人目につかないところで話してたつもりかもしれないけど。屋上から鍛練場裏にいる人間の顔見分けるくらい、俺には余裕なの」


屋上から、と聞いて、アレンは「あ」と小さく声を上げた。

そういえば以前、二人で屋上にいた時、ロイが突然声を上げたことがあった。
あの時はすぐになんでもない、と言ったが、もしかしたら、その時に見てしまったのだろうか。

信頼する大事な仲間が、アレンに大怪我を追わせた元凶と、こそこそ密会しているところを。