レベッカ




アレンはロイの腕から抜け出すと、その顔を見上げて唇を尖らせた。


「こんなん怪我に入んないし。……それに、お前が言うな」


苦笑を浮かべたロイの顔は、腫れは一応引いたものの、あちこちに痛々しく紫の痣が浮き出ていた。

ガーゼやテープを当ててはいるが、その他のところはあまりに見た目に痛いので、化粧で隠してもらっているくらいだ。
ナイジェルは「怪我してるってわかってるのに、顔見るたびにぎょっとする」と言っていた。


「脇は」
「今は、痛み止め打ってるから。平気」


「そう」と短く呟いたアレンは、ロイの手に巻かれた包帯を見る。

深い傷は脇腹の銃創だけで、それも経口の大きくないものだったし、重要な臓器も避けて貫通していたため、大事には至らなかった。

ロイの怪我はほとんどが殴られたり蹴られたりのもので、打ち身や打撲や擦り傷が、全身至るところにある。

治るのに数週間もかかるような重いものではないし、本人も至って元気そうにはしているのだが、表面的な傷は、見る人にとってはとにかく痛々しいものだ。