「……レベッカ」


アレンは、幼馴染みの名を呟く。

悔しくて悔しくて、どうしようもなかった。

ハリーは、マルクに委ねれば何かが変わるのだと信じて、行動を起こしたのだ。
それなのにそんな部下を簡単に見捨て、全てあいつがやった、あいつが悪いのだと、何の後ろめたさもなく言えるマルクに、腹が立って仕方がなかった。

パウルは、あんな奴の味方だと、汚名を着せられたままで死んだのに。


「どうすればいい……?」


掠れた声で囁いて、アレンは、空に手を伸ばした。
レベッカがいつも見上げていた空に。

ふらふらと頼りない足取りで、柵へと近寄っていく。
その表情には恐ろしいまでに色がなく、どこか遠くを見ているようだった。

風が頬を撫でる。
レベッカが優しく宥めるようにしていたのとどこか似ていて、アレンは、そのまま目を閉じた。

申し訳程度に立ててある鉄柵に、アレンの足がかかる。

そして、ぼんやりと目を開いて、空を仰いだまま、もう一歩踏み出そうとした、その時だった。