自分のものではないような感覚がする腕を、なんとか動かす。
無理に捻られていた腕を持ち上げようとして、力が入らずに失敗した。
その手の甲に、ぽたりと水滴が落ちる。
「なに勝手に、怪我なんかしてんだよ」
荒れてはいるが、迫力のない鼻声。
「うん」と呟くと、力なく殴り付けてくる拳。
素手で戦って腫れたそれに、やっと力の戻ってきた手で、触れる。
「人が怪我したら怒るくせに、なんなわけ」
「うん」
「だいたい、昔っからそうじゃんかよ。いっつもへらへらして」
「うん」
「あたしの許可なく殴られてんじゃねーよ……」
「うん。ごめん」
アレンの怒りの表し方も、泣くか怒鳴るかで、昔から変わらない。
どちらかというと苦手な方の怒り方をしているアレンにただ頷きを返しながら、ロイは、どこか心地好さも感じていた。
こんな自分のために、まだ怒ってくれるアレンに。


