レベッカ




丸腰のままで立ち尽くすアレンに、雄叫びと共に、数人の屈強な男たちが飛びかかった。


ノコギリ刃の大きなナイフを振りかざした男の懐に、小さな体が素早く潜り込む。

男の背中側から見ていたロイからは、ただ一人で跳ね上がったように見えた。
だが彼は床に倒れ伏し、そのまま動かなくなる。

身軽さと素早さを武器にしているアレンからしてみれば、体格の良さにものを言わせて戦う人間なんて、うどの大木も同じなのだ。

下から思いきり顎を蹴り上げた脚を、その勢いのまま振り下ろす。
低い位置から不意打ちを狙って来ていた男が一人、脳天に踵落としを食らって、寝転がった。


一人、また一人と、着実に数が減らされていく。
アレンたった一人によってだ。
ハリーが、ぎり、と歯を噛み締めた。

低い呟きが、少し離れたロイの耳にも届く。


「クソ、どうなってんだよ……化け物かよ」


ハリーが苦々しげに見つめる先で、体の大きな男が喉を突かれて倒れ悶え、その巨体を踏み台に、アレンが高く飛び上がっていた。

“化け物”なんて言いたくなるのもわからないではない、とてもじゃないが、治りきらない怪我を抱えた人間とは思えない動きだ。