レベッカ




さっき撃った時は身動きの取れない、しかも床に座り込んでいるロイに三発。
床に対する角度を考えれば、例え狙いを外して跳ね返ってもどこに跳ぶか予測が付く、そう自信があったから、撃った。

だが今、怪我をものともせず俊敏に動くアレンを標的に、どんな方向に跳弾するのか想像も付かない状況で、果たして撃てるか。

逡巡ののち、ハリーは右手を挙げた。
銃口の先には――アレンの姿。


「……正気かよ、あんた」
「おい。お前ら、なにモタモタしてんだよ。相手は女だぞ? まさかビビってんじゃないだろうな」


ロイの声には答えずに、大声で言う。

言わずもがな、背後に控える、マルクに賛同した隊員たちへの言葉だ。
それは士気を高めたり奮い起こさせたりなんていう高尚なものではなく、ただの、脅迫だった。

すう、と息を吸い込む。


「おい!! 今さら選択権なんかあると思ってんのか!!」


切羽詰まった怒声が、腰の引け気味だった隊員たちを揺り動かす。

彼らは、戦うことを強要されていた。
何か弱味でも握られているのか。

実のところ、本当に強いのは、戦いたい人間ではなく、戦う必要に駆られた人間なのだ。