「……おはよ」
「……ん。はよ」


目を伏せて鼻を鳴らしたアレンに、ロイは困ったように目を泳がせる。

ひょこひょこと壁伝いに歩くアレンと、どこに用事なのか、ロイが廊下ですれ違ったのは、翌日のことだった。



考えが整理できるほどの時間は、経っていない。
昨日のことに触れるのは気が引けて、けれど全く関係のない別の話題もなくて、「あー……」と意味のない音だけがロイの口から漏れる。

ここまであからさまに狼狽えるロイを見るのも珍しいが、アレンだって決して平静ではなかった。
せめて思春期の子供みたいな反応はしたくないと、必死ですました顔を取り繕う。