「……避けるかと思った」
「……え……あぁ、」


そっか。と口にした途端、アレンは、表情を変えた。
戸惑ったような、困ったような、情けない顔。
群れる小魚のように忙しなく泳ぐ目線を見て、ロイは言った。


「……なんで」


ロイの低い声に怯えたように、アレンの肩が跳ねる。

頬に触れたままだった手を簡単に振り払われてしまったのは、アレンが、泣きそうな顔をしたからだった。
アレンの泣き顔には、昔からどうも、調子を崩される。
どうしたらいいかわからなくなるのだ。

松葉杖で足を引き摺るように逃げ去ったアレンの後ろ姿を、目ですら追えないまま、ロイは、半ば呆然として立っていた。
考えていたのは、ただ一つだけ。


(あんな……女みたいな、顔)


――はじめて見た。