「アレン」
風に煽られた髪に触れられそうな距離まで来てやっと、ロイは口を開いた。
アレンには、屋上に上がって来た気配が幼馴染みのものだととっくにわかっていたので、ちらりと視線だけ流して、「ん」と返事をした。
フェンスに乗った腕をさりげなく擦り合わせたのを見て、ロイは無言で上着を脱ぐ。
傷に触れないように細い肩にかけると、アレンはようやく、ロイの目を見た。
「寒いの?」
「別に……いや、うん、ありがと」
自分でも呆れるほど無愛想に呟くと、アレンはまた正面を向いた。
だが、その目は何を映しているわけでもなく、ただすぐ側に立つロイの気配を探っている。
時々こんなふうに不意打ちで、昔はしたことのなかった扱い方をしてくるから、質が悪いのだ。
そう思うことにして、アレンはロイから目を逸らす。


