そちらへ歩き出したロイは、正面から歩いてくる、色の黒い大男に気付いた。
「よー、ニラ」
手を上げて軽い挨拶をする。
ニラはロイを見て、何か言いたげに口を開いた。
だが、ふと彼の背後に視線をやると、同じように片手を軽く上げた。
「よう」
「どうかした?」
「いや、別に。ロイは……どうせアレンか」
この頃、ニラたちに切り出す話題がアレンのことばかりなせいか、よくこんなふうに言われるのだ。
ロイもはじめのうちは否定していたが、次第に自分でも自覚してきているので、笑って流す。
「どうせアレンですよ。屋上行ってみるとこ」
一言、二言の言葉を交わして、ロイとすれ違う。
向かった先には、ナイジェルとキュウがいるはずだ。
(……あれ、)
ニラは、一体何に気付いて、言葉を変えたのだろうか。
ロイたち三人の他には、人もいなかったはずだが。
ロイは違和感に、訝しげに眉をひそめた。


