「え? どこ行くの」
「先に戻る。トレーニングの続き」
「おい、あんま無理しすぎても」
「るせーな。あたしが早く復帰しなきゃ、ロイたちだって大変だろ」
「そんなこと、アレンが気にする必要はないよ」
「いーから、ゆっくりしてれば」
「……アレン?」
脇腹を庇うように体勢を立て直すと、アレンは椅子や人の脚を避けながら、ゆっくりと歩き出した。
来る時はロイに支えてもらって歩いていたが、ここからMYまで歩いて帰るのも、いいリハビリになると思えばいい。
(なんで……なんか、機嫌悪いみたいになってんだ、あたし)
最後に余計なことを言った、と後悔する。
あんな言い方、まるで、ロイがアレンをほったらかしでウエイトレスと話し込んでいたのが、気に入らなかったみたいな――やきもちを妬いて拗ねたみたいな態度だ。
頬が熱い。
あの場にいるのが嫌だったのは事実だが、それはなんとなくいたたまれなかったからであって、やきもちなんかでは断じてない、と、アレンは誰にともなく心の中で言い訳するのだった。


